虹色戦隊ナナレンジャー -VERSUS-
「ぶあぁー、疲れた」
開いた扉から、おっさんくさい鼻がかった声と海老のように曲がった背で、疲労度を表現する白衣の女。残業サラリーマンがベッドに沈む勢いで、全存在を椅子に預ける彼女。腹の底から疲れを溜息として出すと、横目、台の上に置かれたチラシの裏に描かれた絵を見る。こんなに疲れたのも、これの所為だ。クレヨンで描かれたのは顔以外が人間。以内は、
「感謝を、コバヤシさん」
重い声がやってくる。ぐるりと椅子を回してそちらに向き、「苦労した分ちゃんと働きなさいよ、改人―――」
―――辰年だから龍の君
「ドラゴンヘッドって言って欲しいな」
龍。西洋ではなく、東洋の方の空想生物。鹿の角にワニの口、蛇のような胴体は無いゆえ、姿を形容する語は、彼自身の言うとおり《竜の頭》がふさわしい。しかし、
「改人、それだと短すぎるのよ。《銘》は伝統的に中途半端な長さなんだから」
「くだらない事だな」
溜息を吐いただけだろうが、こもった息の音が大きくした。とりあえずは、彼の望みどおりという訳だ。
改人になるのは、良い成績をあげた黒服に与えられる権利で、その時、これこれこういうのになりたいと希望する事になる。強いとか後方支援とかの、抽象的な願いなら、イマジネーションという無限を使えるが、このように徹頭徹尾決められていると苦労する、というより楽しみが無い。新鮮な驚きを貪れない事はマッドサイエンティストにとって苦痛だった。だから彼女はとても不機嫌に、椅子に泥のように沈んでいる。
「二日は安静、三日目から軽い運動、実践訓練は一週間後。前もって説明した通り、ちゃんとレポート提出するのよ改人」
「へいへい」くちばしというべきか、鼻の部分を擦りながら、「長いなぁ、とっとと戦いたいのに」
「だーめ、ちゃんとしっかり」
幼稚園の保母のように注意を言おうとした、時、
その時、
「………女」
「ん?コバヤシさん」
いきなり、竜男の方を見て、否、その先を見て、
「なんで貴方が―――」言葉の続きを、
「くっらい歓迎だねぇ」
止める声。誰だ、
まだ重さになれない頭を、コバヤシの視線の向きに重ねる、そこに、
歌舞伎物、と言えば解るだろうか、
銀の錦をかけた紅白の和装、はだけた胸はサラシを巻いて、
髪はまとめて、細工の簪。顔は、
紅さして、眉を細く、自らを引き出すのではなく潰す化粧。
そして、側には
本来、陽の下でこそ目立つ出で立ちなのに、地下室の暗がりとその姿は、不気味な一体感を見せている。だから竜の頭は、少し怯んだ。まるでそれを見透かすように、「おや、」にやりと口を歪め、
「化け物の分際なのに怖がるかい」
「……な」「上等だ」
女はけらりと笑う。
「いい奴隷になれるよあんた」
笑い続ける。自分が世界の中心だと誇示せんばかりに、場を逆撫でする笑い声。人が一人、キレるには事足りすぎた。
「おい」
「あん?」にやりと、「なんだい化け物、小便か?」
「……その舐めた口、閉ざして」
「改人ッ!」
コバヤシが止める隙も無く、竜は開口して、
刹那、
「やるっっ!!」
ボアァウゥゥオウゥ!!!
目前に放射される高温の炎ッ!鉄作りの部屋さえ溶かす勢いのそれは、熱と光で光景を紅蓮に変える、そう焼き尽くしてるのだ、これで、
「三下以下の、四下」
え、
「間抜けだから使われるってんだよ、ねぇ」
横に避けていた?慌てて矛先を、
向ける前に、
横目で、見た物、
、嘘だ―――
「お仕置きだ」
くくった髪と丸いサングラスが他の者との別、黒服のキタムラは走っていた。それが自分の意思ならまだいいが、ある意味走らされているのだから、彼は非常に面白くない。しかもその指図する人間が、
「こっちですッ!はよう!」
「い、い、急いでくださぁい!」
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