明るくない灯
布団の中で寝返りをしつつ、目を覚ました。
とはいっても、まだまどろみに包まれ仄かな快楽を味わっていた。
寝ぼけ眼をさすり、軽く頭を振って体を起こす。
すでに部屋は暗かった。丁度夕方から夜になりかけといったところか。暗い部屋の中に僅かに夕日が残っていた。
僕はそこで現実を思い出す。
しまった、四時から大学で授業があるじゃないか!
あわてて布団から抜け、ビデオデッキの電子時計に近づいた。僕は目があまりよくなく、近くに寄らないと数字が読めない。
ぼんやりとした電子時計の数字に焦点を会わせる。寝ていたので、その光は眩しい。
88:88。
あれ?
なんだろう、時間が表示されていない。僕が寝ていた間に停電があったのだろうか。
テレビをつけよう、そうしたらあらかた何時か分かるはずだ。
ビデオデッキの上にあるテレビのスイッチを押す。
カチッ。カチッ。カチッ。
付かない。
まったく、こっちは時間を知りたいというのに。
部屋を見渡すと、ずいぶんと暗かった。さっき起きた直後はそれなりに夕日が混ざっていた明るさだったはずだが、今はほとんど真っ暗だった。
とりあえず、机の上の携帯電話を取り、開く。
ディスプレイの光が、部屋を薄く照らす。
6:30。
時間は分かったが、しかしもう授業は終わっている。僕は目覚ましをセットしていなかったことを悔やんだ。
まあ終わってしまったことは仕方がない。
これからどうしようか。
僕は部屋の灯りをつけようと、蛍光灯の線を引っ張る。
カチッ、カチッ。
付かない。
やはり停電だろうか?僕は携帯電話の光を頼りに、ブレーカーが飛んでいないかどうかを確認した。
なにも異常はない。
部屋に戻ってきて再度電気をつけようとしたが、付かなかった。
一体なんだろうか。
きっと停電が起こっているに違いない。そうだ、そうに決まっている。
けれど・・・・。
僕はビデオデッキを見た。電子時計は、消えていた。
人は暗闇の中にいると不安になるというのはあながち嘘ではないようだ。
まだ少しではあるけれど、不安を感じ始めていた。
この部屋の電気機器は携帯電話を除いて、死んだように沈黙しているのだ。
それに……闇が一段と重苦しくなったように思える。まるで夜中だ。
携帯のディスプレイを見やると、6:33と表示されている。こんな時間にこの暗さ、今は夏だというのに、信じられない。
唯一の携帯電話の光はか弱く、闇に吸い込まれている。
はっきり言えば、尋常な暗さではないと思う。それは僕が不安だからそう過剰に思っている、というわけではないだろう。
携帯電話を懐中電灯代わりに僕は外に出た。
風は全くなく、空気は生温い。
アパートの一階に住んでいるので、ドアを開けると上には照明灯が一定間隔を置いて備わっている。
しかし、電気のついている照明灯は、なかった。
僕の不安は増幅するばかりである。
なにか、すごく不安・・・・・こんな気持ちになることはあまりない。
携帯のひ弱な光を頼りに道路に出る。
僕は、目を疑いたかった。
家という家、アパートというアパート、建物という建物、全てが真っ暗だった。
空は重厚な雲に覆われ、月もなくただ闇を降り注いでいる。
それ以上の違和感、それは人気がないということであった。
静寂。家から流れるテレビの音も、笑い声も、食器を洗う音も、何もない。
なんだっていうんだ!?
少し小走りに、道を歩く。よく買いに行くコンビニに差し掛かった。
誰もいない。そして灯りのないコンビニはまるで廃墟のようだ。
それなりに交通量の多い道路がその隣にあるのだが、車は一台もなく、また車やバイクの音もない。
全てが静寂。
僕の周りはそれに支配されているようだった。
恐る恐る、コンビニの中へと入る。自動ドアは、開いた状態で停止している。
雑誌類を置いている窓側を歩く。
ふと、何かの蠢きが上に見えた。
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