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Evangel




 雪が、舞っていた。
 鈍が支配する空の下、冷たく乾いた街が在る。そこへ舞い散るが故に、白く映る粉雪。廃墟も同然の街に施されていくのは、今は亡き街の住人へ捧げる死化粧。
 その人気のない廃墟の一角に佇む、二十歳には届くまい青年が、独り。
 三つ編みにした銀の長髪。黒服を纏う長身痩躯が羽織っているのは白衣。童顔、というほどではないにしても整っている顔立ちが、その若さを主張している。
 いつも通りの、特に何をすべきでもない、静かな金曜だった。
 既に亡き姉の死に場所に、彼は彼女の好物とコップ一杯の水を置く。
 到底、墓などとは呼べそうにない、朽ち果てた建物の角。
 血の染みついた壁に十字を切り、胸に手を当て、しばし祈る。
 終わり、口元の煙草に手を添えて、紫煙を吐き、一息。
 その時だった。
 深き漆黒を身に纏う、翼を折られ、地へと叩き付けられた一羽の鳥。
 そいつが身を潜めていた闇を外れ、青年のもとへと逃れてきたのは。