ILO・2・バスターズ
第一章「シローくんは元気です」SHILOW THE HUNTER
[一]
草薙シローは無職だった。
ハローワークからの帰り道。
草薙シロー、二十五才、は、駅前のファーストフード店に立ち寄って、一人寂しくハンバーガーをかじっていた。
季節は初夏、六月。まだ日も高い午後三時。
背広にネクタイ、白いワイシャツ、野暮ったいメガネという、典型的なサラリーマンスタイルのシローは、学校帰りの若者たち(?)でにぎわうファーストフード店の中では、明らかに「浮いて」いた。
アイルランド系の血を引くシローは、それでなくとも、金髪、碧眼と、たいへん目立つ外見をしていたので、女子高生たちがキャアキャア言うのも、無理もないことであった。
当の本人は、そんなことなどつゆ知らず、ジャングル迷彩のデーパック(!)からケータイ電話を取り出して、自宅の電話番号をプッシュしていた。
プルルルル、プルルルル……、
「……」
電話はなかなかつながらなかった。
何の成果もなかった今日一日のことを思うと、暗澹たる思いにとらわれる。
それでもシローは、彼の帰りを心配して待っていてくれる女性のためにも、連絡を入れないわけにはいかなかった。
プルルルル、プルルルル……、プシュッ。
電話がつながった。
「あっ、もしもし。葵(あおい)さんですか。シローです」
それを聞いた何人かが、あからさまにがっかりしたような顔を見せた。
電話の相手は、彼の、亡くなった妻の妹で、シローにとっては義理の妹にあたる人物だったのだが、そんなことを説明する必要はなかった。(当たり前だが)
「今日はお忙しいところを……、ホントにありがとうございました。助かりました」
シローは、留守番を快く引き受けてくれた義妹に深々と頭を下げてから、「今日の成果」を、正直に告げた。
「それで、あの、就職のことなんですけど……、すみません、またダメでした……」
義妹はわずかにとまどった様子だった。
「こんなんじゃ、父親失格ですよね……、――えっ?」
フォローの声と、激励の声が返ってきた。
「……ありがとうございます……、葵さんにそう言ってもらえるとうれしいです……」
義妹は照れた様子で、いえ、そんなこと……とつぶやいた。
「でも」
はい?
「ぼくももう二十五です。あかりも来年には小学生になります。
新しい机も買ってやりたいし、新しいランドセルだって……、それに――、」
ちらり、と、デーパックを見て、
「そろそろ……、アンケートハガキの『職業』の欄に、『バンパイア・ハンター』と書くのが、
つらくなってきました……」
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