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ケモノケダモノ、オソロシキ




序の序




 少年は、道端で、文字通り道草を取っていた。
 草を、一本、一本、
 一つ、一つ。丁寧に。
 草のことがわからなかったから、少年は草をもっと知るために、こうして、千切っている。
 それでも、草のことはわからない。
 あきらめかけたとき、少年は何かに囚われた。
「え?」
 そこは、今までいた帰り道の途中などではなく、奇妙な場所だった。
 ざあざあ。
 ざあざあ。
 青い黒い
 緑の黄色の
 白い赤い
 ぎらぎら
 きらきら
 様々な「何か」の洪水。
 見たこともない図形がある。
 ただの一本の線がある。
 浜辺に押し寄せる波のような、
 流れ。
 少年は恐怖した。
 ここは、どこ?
 いったい今までいた場所はどこにいってしまったんだろう?
 千切っていた名前も知らない草は?
 さっきまで背負っていたランドセルは?
 少年の、体は?
 足は、首は、腕は手は?
 何もない。
 けれど、ここには何かがあった。
 リコーダーのような棒きれが目の前を流れてゆく。
 消えた。
 波。
 ここは、どこ。
 僕は?
 僕は誰? どこにいるの?