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序章・「終わりの始まり」 Page:0001 
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ライフ・アゲイン




序章・「終わりの始まり」



 須藤守(すどうまもる)は、円形の窓から外の風景を眺めつつ、ふうと一息ついた。
 7日間のイギリス修学旅行の帰りの飛行機。
 疲れきった生徒達が、そこら中で寝息をたてている。
 行きの時のお祭り騒ぎはどこへやら、機内の雰囲気は、ずいぶん前からマッタリモードに突入していた。まあ、修学旅行の帰りなどというのは、大体そういうものなのだろう。
 普段行動的な守も、さっき機内食を食べた直後から眠くて仕方なかった。
 このまま、空港まで眠ってしまってもよかったが、それはなぜかもったいない気がして、守は辺りを見回した。とりあえず、普段、あまり見れないクラスメートの寝顔でも観察しようと思った。
 現状を出来るだけ楽しむこと。それが、守の信条なのだ。
 ――クラスメートの、藤村歩美(ふじむらあゆみ)の姿が目に付いた。
 彼女も、既に眠りの世界に入っていたが、その寝顔は同じ高2とは思えないくらいあどけないものだった。もともと彼女はクラス一小柄で、容姿やしぐさも子供っぽいことで有名だ。
「やだ歩美ったら。寝顔かわいいー。」
「赤ちゃんみたーい。」
 周りの女子生徒が、頬をつついたりいたずらしても、よほど疲れているのか歩美が起きる様子はまったくない。
 守は、普段はおとなしくて目立たない歩美が、コッツウォルズの田舎町や、大英博物館のロゼッタストーンをみて狂喜乱舞していた様子を思い出した。
 友人達もみな寝ているようなので、仕方なく守も寝ることにした。――暇つぶしの手段は、もうなさそうだ。
 座席に座りなおし、目を閉じる。
 そのとき――。
 ゴォン・・・!
 後方――尾翼の辺りだろうか?何か、爆発音のようなすごい音がした。
 なんだ!?
 守は、閉じかけた瞼を見開いた。
 振動はなかったが、その音があまりにも響いたので、寝ていた生徒達はみんな起きたようだ。
「きゃあ!」
「な、なんだよ、今の音・・・?」
「私、恐い。」
 機内が、急速にあわただしくなる。
 これは・・・酸素マスクか?
 守は、爆発音とほぼ同時に、天井から落ちてきたものを手に取った。
 確か、機体が破損して『急減圧』という状態になると、酸素マスクが落ちてくると何かで読んだ覚えがある。
「おいおい、冗談じゃねえぞ!?墜落なんてことないよな、守!?」
 守の隣の座席で、友人の丹波秀次(たんばひでつぐ)が、うろたえた様子で叫ぶ。
 彼とは中学時代からの友人で、同じ陸上部でもある。
「落ち着け、秀次。考えすぎだろ。大体、機内アナウンスだってまだ何も――。」
 ガガ・・・ただいま、緊急降下中ですので、酸素マスクを着用してください。繰り返します――。
 アナウンスが流れる。――と同時に、機体が左右に旋回し始めた。
「ひぃ!!」
 秀次が、搾り出すような悲鳴を上げる。
「しっかりしろ、秀次!マスクだ、マスク!」
 自分のマスクを素早くつけた守は、パニック状態の秀次のマスク着用を手伝う。
 機内の揺れが激しさを増し、もはや、立っていることも困難な状況になる。――白い霧のようなものが、辺りに充満しだした。
「やだ!!死にたくない!!」
「落ちるの!?落ちるのォ――!?」
 悲鳴、絶叫、混乱。
 機内は、完全なパニック状態に陥った。――アナウンスも、もはやない。
「く・・・!!皆落ち着け!!」
 座席から身を乗り出し、守が叫ぶ。隣の秀次は、震えながら、何かぶつぶつとつぶやき始めている。
 パニック状態ながらも、ほとんどの生徒が酸素マスクをつけていた。――ただ一人を除いて。
「藤村!!マスクつけろ――!!」
 守の絶叫も、歩美には聞こえていないようだ。
 彼女は、あまりの恐ろしさに、酸素マスクを胸にぎゅっと抱いて、下を向いて震えていた。
「藤村――!!」
 ダメだ、聞こえてない!!
 なんとか彼女のもとに行こうと、守は座席を立った。
 その時、今までで一番激しい揺れが・・・!!
「うわ!!」
 守は転倒し、床に後頭部を強打した。
 守の意識が、急速に遠のいていく。
 くそ・・・俺は・・・死ぬのか?嫌だ・・・父さん・・・母さん・・・みんな・・・!!
 ――3分後・・・墜落。